1995年 香港
第1回 1995年12月22日〜12月25日

動機
香港はイギリス領である。ですが、もうじき1997年7月に中国に返還される。
「返還前の香港を見ておきたい」そんな思いからこの旅行を決めた。

私は初めてだが、同行者のCさんは、二度目の香港である。
以前社員旅行で来ているので何かと心強い・・・
とはいっても私の性分からすると私のほうが彼女を振り回してしまいそうなのだが。
Cさんは私より6歳年下で、かつては仕事の同僚だったが、やがて私は退社してフリーになった。
フリーになった現在でも、付き合いはつづいている。

ひとりはひとりの旅の楽しみ方があるように、ふたりにはふたりの楽しみ方があるはず。
そして、その楽しみは倍増するに違いない。

よく「海外では、開放的になる」とか、「外国に行って自分を見つめ直す」とか
背筋がゾゾーッとすること言う人がいるけど私はそういうタイプではない。
束の間の気分転換ぐらいにはなるが「海外に行ったぐらいでは人間変わらない」のである。
「どこにいても私に変わりはない」し、「突然変わったりしないもの」と思うのです。
宇宙飛行士の向井千秋さんが言ってました。
「宇宙へ行って人生観が変わったり、神の目で世界を見たという感覚になる人は多いと聞きますが、
私は、宇宙へ行っても変わりませんでした」と。
彼女の言うように、私も「旅行ぐらいでは変わらない」んです。
また、病気して入院すると人生観が変わる人多いらしいです。
自分を見つめ直すとか言って・・・。でも私は、そんなこともなかった。

人生観だのと大それたことより、今回の私の目標は‘フカヒレ’を食べること、である。
これまでフカヒレを食べたことがないのです。ガイドブックでレストランもしっかりリサーチ済みである。
もしや、ふかひれ食べて自分を見つめなおしちゃったりして。人生観ガラッと変わったりして。
ありだな・・・


最初に目にしたもの
機内から目的地が見えると決まって窓に張り付いてしまう私だが、今回はしょっぱなから
「えっ?日本?これって新宿?」と思ってしまっただよ。ただただビルばっかし。
この当時、かの有名な、ビルの中すれすれに着陸するという‘啓徳空港’だったのでした。
(「恋する惑星」(1994年)「天使の涙」(1995年)ウオン・カーウアイ監督、等香港映画参照)
乗ってる方はさほど感じないが、地上からこの着陸の様子を見るとホントがっつんぶつかりそうだ。
でも、かつて一度も事故はないそうです。

空港からホテルに向かう頃は陽が暮れかかる時間だった。
ビクトリア湾に夕日が映えて綺麗だったことを覚えています。
あまりに綺麗で写真を撮ったものの逆光で写っていない・・・。


酒盛り
女二人で12月といえば忘年会でしょう。忘年会といえば酒でしょう。(そりゃそうだ)というわけで早速買い出しに
行った。
ホテルは、九龍公園の真ん前で便利のいい所にあったので、ほどなくセブンイレブンを発見。
上海製のシャンパンと桂花陳酒GET!そして私はどこからともなく大好きなライチを入手したもよう。
(ビニール袋をもってニンマリしてる写真があった)
クリスマス時期だったのでホテルからお菓子の差し入れ(サービス)もあった。
さあ、飲むぞー!・・・とここで停電。えっ?なんで??

外はイルミネーションが点いていたはずですから、ホテルだけが停電した。
後で聞いた話では、このホテルの壁にもクリスマス用のイルミネーションを取り付けるというので、
その作業中だったらしいのです。
あらら・・・と思っていたところへCさんが「わたしロウソク持ってきたんです」と言う。

しっかしこのロウソク大活躍でした。
確か、香りのするロウソクと言ってたような・・・彼女がなぜロウソクを持参してきたか?
それは、「クリスマスだから」だと言う。本当にタイムリーだった。
私などは、飲めればいいわけで、ロウソク(だから、こういう時はキャンドルと言うのだよ!)っていう発想はどだい
無理な話だ。感心、感心。




2日目

香港公園(香港島)
公園内には鳥園がある。南国ならではの色とりどりの鳥が真近に見学できる。
ここで印象に残っているのが、‘クララ・リー’である。クララ・リーは鳥じゃなくて人間である。
今回の女性ガイド、クララ・リーはスベスベのお肌をしていて、化粧っけがほとんどない。
「ミラクルだけよ」とクリームの宣伝をする。バスに戻ってからも、ミラクルの宣伝をさりげなくしている。
美容に全く関心がない私は初めは聞き流していたが、あんまり繰り返されると「そんなにいいの?」となる
単純バカである。
2本買って1本は「スベスベになるんだって」と友人にあげた。
あとの1本は「しみがなくなるんだって」と母にあげた。
が、母の肌には合わなかったみたいで、今だに家にある。

 頭のぽやぽやがカワイイ


ビクトリアピーク
ここは香港の名所中の名所、アメリカ映画「慕情」の舞台でも有名。
ビクトリア湾を挟んで九龍側まで一望できる。

 ’95年ビクトリアピークからの眺め


レパレスベイ
私はここを「はりぼて公園」と呼んでいる。
もともとは回航安全を祈願して、巨大な像が設置されたのだろうが、それからなんでもかんでも増えに増えて、
金儲けの神様、良縁石、渡ると寿命が延びる橋、等等・・・なんでもこい!状態。

すぐ近くの高台にマンションがある。風水の関係で、真ん中に穴が開いている。
後ろの山から龍が水を飲みに降りてくるのを邪魔しないためだそうな。
素敵ですよね、こういう考え方。
とかく人間さまは、自分本位で事を推し進めるが、目に見えない‘龍’を最優先に考えてあげる・・・。
香港は道教が盛んだから「目に見えないものの存在」を守っていける環境にあるのかも。

 龍の通り道。中央の茶色の部分がすっぽりあいている


買い物天国、in香港
観光の合間合間にお買い物をさせられる。香港は貿易都市だから手に入らないものなどない。
海外ブランドから宝石、ジャッキー・チェンのお店まで高級感漂っている。宝石店に行った。
アクセサリーの類には興味のない私の目にも「ここの石は良質なんじゃないか・・・」と思われた。
アクセサリーはほとんど持ってないし、身につけるのもあまり好きじゃない私は、店内をブラブラするだけだったが、
均一セールのコーナーがあって、何気に覗き込んだら、滅多にお目にかからない誕生石を見つけた。
お手ごろ価格だったので、初めて指輪を持つことになった私ですがそれが自前だったなんて哀しすぎる・・・。

 ビルにはめ込まれたお宮にはお供え物がしてある
観光途中で見つけた香港島の美容院の看板(パーマが5000円ほどなので日本とほとんど変わらない)


黄大仙(ウオンタイシン)
私は日本国内、海外問わず神社仏閣が大好きです。ここは香港最大の道教寺院です。


香港のおみくじ
黄大仙でおみくじをひいた。中国のおみくじは、まず箸たてのような筒を振ります。
カッチャ、カッチャ振ってると中から一本だけ箸が飛び出してきます。
その箸の番号がおみくじ番号です。次に願い事を言います。
そして、半月形の木をふたつ同時に投げて裏と表になれば、そのおみくじの番号でOKというわけ。
もし、裏と裏、表と表になったら、またカッチャ、カッチャからやりなおし・・・。

この時は時間の関係でカッチャ、カッチャだけで決めてしまいましたが、
私が引き当てた第18番の漢詩はひと目で「こりゃ悪そうだ」と思わせるものでした。
だってそこには、‘啼’‘血’‘涙’‘悲’‘寒’の文字が並んでいるんだもの・・・
数年後香港で、くじ100種類の解説本を購入して、この時の18番を調べてみたら、やっぱり「大凶」でした。
お知りになりたい方はメールください、わたくしめが鑑定いたします。

 大凶を引き当てた’95年・・・このあと日本で大変なことが


ディナークルーズ
ビクトリア湾をめぐりながら船内でバイキングのお食事。
クリスマス時期なので(明日はクリスマスイヴ)ビルというビルには華やかなイルミネーション。
もちろん普段はただビル内の照明だけだし、休日は事務所も休みだから明かりも少ないはず。

クララ・リーの代わりに‘陳子良’さんが来ていた。
彼はスラッとした好青年で、メガネのセンスがとても良かった。
日本語の他に今、韓国語の勉強もしていると言う。
食事の時などは料理を指して「これは美味しい、こっちはそうでもない」と正直に教えてくれる。
その素敵な彼の薬指に光るものがあった。「ちがいます、ただのアクセサリーです」と言っていたが、
それが本当だとすると‘女除け’だな、と私たちはウワサしあっていたのでした。




3日目

香港島へ渡る
今日は一日フリータイム。
ホテルで朝食をとってから、わざわざリージェントホテルの翠景粥麺に「お粥」を食べに行った。
朝食が2回。魚の生姜味粥、うーん美味しい。

お次はフェリ−で香港島へ。WAN CHAI に着く。
ここから CENTRAL までトラム(路線二階建てバス)で行く。トラムは香港島にしかない。
目的地は、「ビクトリア女王の像を見る」なのです。思ったより小さい・・・


燕の巣とフカヒレ
お次はいよいよ今回のメインイベント‘フカヒレ’・・・だけどなかなかお店が見つからない。
時間が早いせいもある、今日一日しかないフリータイムを有意義に過ごそうと、早朝にホテルを出た。
まだAM10:00にもなっていないのだった。道々、乾物店を発見。ここ香港は海の幸が豊富である。
よって干物のバリエーションも豊かである。
Cさんは、ホタテの乾物、私は‘燕の巣(ビン詰め)をGET!・・・だが、これは、失敗した。
1箱12本入り、重いっ!朝っぱらからこんな重いもの買ってからに!持って歩けないっちゅうねん。
‘燕の巣’に目がくらんで、あとさき考えられなかった私・・・後悔先に立たず・・・である。

同じ通りを行きつ戻りつして、ようやく目的のフカヒレ店発見。
それぞれ別々のメニューを注文して「一度で二度美味しい作戦」だ!
フカヒレの形がそのまんまあるのよーん。おいしー♪しあわせー♪


九龍に戻る
たて続けに食べているがまだお昼前だ。昼食は九龍に戻って取ることにしている。
帰りは、地下鉄に乗る。キンバリーホテルに入ってる君胎閣海鮮酒家で飲茶だ。
(いったんホテルに寄って、重たいツバメの巣を置く・・・重くてガマンできなかった・・・)

お目当てのレストランに行ってみたら思いのほか敷居が高い。
少しビビリながらも、まずはお茶を選ぶ。私には是非飲んでみたいお茶があった。
「菊宝(コッポウ)」と「水仙(ソイシン)」である。この時は、菊宝を飲んだ。
飲茶の味は申し分なし♪これから香港に行く予定の方にお薦めです。
字ズラだけで闇雲に想像して、注文したものの、どれも美味しかったです♪

キンバリーホテルのお茶店で念願の「水仙」購入。これは上物でした。
Cさんは「バラ茶」GET!見事に大きなバラで香りも強かった。ここのお茶店もお薦めします。

お昼も食べたことだし、残るはおっ買い物!この時何を買ったかすっかり忘れてしまったが、
夜、どっかに行こうとして向かっていたのですが、今晩はクリスマスイヴ。
ものすごい人で、身動きがとれない。押し返されてしまう。
初めは、NATHAN ROADが歩行者天国だったのに、なぜか閉鎖されたため、歩道がおしくらまんじゅう状態
なってしまったのだ。
これには私も歩く気力を無くして戻ってしまった。
・・・でホテルの部屋でCさんと酒盛りを始めたのでした。


サンタクロースが・・・
ホテルの真ん前は九龍(クーロン)公園である。
部屋の窓からは、公園の入り口ゲートが真ん前に見えた。
街中クリスマスのイルミネーションだらけである。ゲートにも、お飾りがあった。
サンタクロースのモチーフである。
ところが、このサンタクロース巨大顔面だけ、しかも顔中一面銀色なのだ。
Cさんだったか私だったか定かでないが「ロボコップみたい・・・」「ハハハ・・・恐いよね」といって笑った。
ロボコップサンタの写真がないのが今となっては悔やまれる・・・。




燕の巣後日談 in 日本
香港土産のツバメの巣はビンに入った液体で、開けて味付けすればすぐ食べられそうだった。
ところが、どんな味付けをしてもいまいちなのである。「卵を入れてみよう」と卵でとじた。
私と、父と、その時たまたま来てたお客さんの3人が食した。母はたまたま食べなかった。

3時間ぐらいして体調がおかしくなってきた。おなかも痛いし、熱もある。吐き気もある。
油汗が出てきた・・・マズイ・・・死ぬかもしれない、と本気で思った。
もう、体にも力が入らない。・・・ヤバイ・・・死ぬ・・・一晩格闘して(家にあったありとあらゆる胃腸薬を飲んだ、
4種類くらい)
翌朝近所の胃腸科に行ったら「そんなもの喰うからだ」とあっさり言われ、点滴をうけた。
・・・点滴しながら思った。「・・・あんなに重くて、苦労して持ってきたのに・・・なんで私だけ点滴なの・・・?」
父も、お腹をこわしたが胃腸薬飲んで治った。
お客さんには責任を感じて電話して聞いてみたが「なんでもなかったわよ、ごちそうさま♪」とケロリとしている。
なぜに私だけ・・・。

回復後、家族から何を言われてもひたすら耐えるしかない私でした。面目もございません・・・
大変な後日談となってしまった。
残りのビンは私自らが廃棄いたしたことは言うまでもない。


おまけペニンシュラホテル
ペニンシュラホテルは言わずと知れた老舗の名門ホテルである。
香港最初のホテルでもある。‘ちょっくら覗きに’行ってみた。
Cさんはティファニーの何かがお目当てだったのかもしれない。
おそれおおくも正面玄関からホールへ。うわっ!赤絨毯だ。

 95年ペニンシュラx'masのモチーフはくるみ割り人形?


オシャレにティータイムのお客さんは、なぜか日本人も多く、ゆったりと紅茶なんぞを口に運んでいる。
菓子は段々の塔のような入れ物にケーキやクッキーが置いてある。
私はこういうのはどうも居心地が悪い。お菓子は好きだけど、なにもこうして食べたいとは思わない。
ぼんやり眺めていると、Cさんが「トイレに行ってきます」という。
「じゃ、ここで待ってるから」と私は残った。帰ってきた彼女いわく「立派でしたよー」と。
この後、何度か香港に行ってるがペニンシュラには一度も足を踏み入れていない。
あの時トイレに行っとけばけばよかった、と今ごろになって悔やんでいる私だ。



1995年香港完



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vol.1