三岔口
(さんちゃこう)

<演目紹介>
宋の名将・楊業の伝記である清代の演義小説「楊家将全伝」の第27回から29回にかけて
三岔口の話が出てくる。劇になったのは約100前である。
蓋叫天が演じたものが特に有名で、のちに張椿華、張雲渓などがこれを受け継いだ。

<見どころ>
この劇の白眉は深夜、暗闇の中で繰り広げられる決闘である。
いわゆるダンマリで、舞台は明るいが、一寸先も見えない真っ暗闇の設定で、
大立ち回りがこれでもか!というほど延延と続く・・・。
空間を計算しつくした斬り合いは、死と紙一重といえる壮絶な神技だ!
手に汗握ってとくと、ごらんあれ!何度見ても飽きない立ち廻りは太極拳だ。



<あらすじ>
三岔口(三つ又の辻から転じた地名)で、義士・劉利華が経営する旅籠に、
無実の罪を被せられ流刑となった将軍・焦賛(しょうさん)が護送されてくる。
焦賛を守れと密令を受けていた焦賛の弟・任堂恵がその後をつけてくる。

 旅籠に任堂恵登場

焦賛らに味方する旅籠の主人・劉利華は妻に命じて護送役人を殺させ
自分は、怪しいと思っている任堂恵を殺しに行く。


一方、任堂恵も劉利華が役人の一味と勘違いしていた。
こうして深夜、暗闇の中で汗握る格闘が展開される。

 左が旅籠の主人・劉利華


必殺の一振りが鼻先をかすめる・・・かわす早業!

暗闇の設定。お互い気配を殺して、聞こえるのは振り下ろす刃風のうなりのみ・・・。




音を立てずに、超スピードの妙技が延々続く・・・





気配を察し手を伸ばし相手の息を探る・・・


 狙いを定めて、ひらりと襲いかかる・・・



・・・と、素早く机の下に身をひそめる劉利華 






一瞬触れあう体、はっと向き直って体技の応酬も音を立てない。


 容赦ない攻撃の連続・・・


隙のない動きの連続! 




ここぞ!と振る剣をはずして宙に舞う・・・


死闘の最中、将軍・焦賛が登場!暗闇の中捕らえて見ると・・・




灯りを持って劉利華は妻登場。「兄じゃか!」「弟か!」と誤解に気づき三人手を取り合う。



最後は誤解とわかりめでたし、めでたし・・・

(写真は1980年の任堂恵・李光)



<tuziの感想>
私が生まれてはじめて見た京劇が「三岔口」だった。2000年北京‘李園劇場’だった。
京劇、という名前だけは耳にしていたが、想像をはるかに超えた感動だった。
このまま北京に住んで、毎晩京劇を見て暮らしたい・・・とまで思うほど。
この時の演題は3本だったが、メインがこの「三岔口」だった。(2000年北京参照)
初めての京劇鑑賞が本場北京の地で見れたことを幸運に思います。
以来、日本での公演があればできる限り見たいと思うようになったが、たいへん高額だ。
中国に行った時にVCDを買ってきて楽しんでいる。
ところが、中国のVCDはとにかく画像がずさんだ。
テレビ番組をそのまま売っていたり(違法です)、VCDそのものの質が悪く、針飛び(?)して
再生できず見れなかったりする・・・やはり京劇は劇場で見るべし!!








vol.17