街中探検
私たちは店内に案内されると黒江と福島に「絶対に店から出ないように!」とふたりがかりで
釘を刺された。
買い物時間はたっぷりある。私たちは店内をくまなく隅から隅まで見て回った。
私もandokoさんもこれといって欲しい物は見当たらなかった。
そこでandokoさんが、メキシコスプーンを見つけた。
目の粗い陶器で分厚いが、ちゃんと‘MEXICO’と柄に書いてあって記念にはなる。
「さすが!これいいね♪」と私も真似て3本ほどGET!
しかし、使っているうちに作りが粗雑なので欠けたりして、ついに1本もなくなってしまった。
こんなことならもっと買って置けばよかったかも・・・。andokoさんの所にはまだ残っているだろうか?
スプーンくらいしか欲しい物はなく、時間はまだまだあまっている。退屈してきた。
andoさんもいっしょだったか・・・いや、私ひとりだったか・・・
あれほど「絶対に店から出ないように!」と釘を刺されたのに、無視して「メキシコを見に♪」店内から外に出た。
一歩踏み出すだけで大冒険である。初めて見る‘ラテン系’人種。
通りすがりの男の人が日本語で「アナタ、ビジン」「アシキレイ」と言ってくる。
私はめげずに交差点まで歩いて大通りを眺めた。
歩道をまばらに人が歩いていたが、車はほとんど走っていない閑散とした街だった。
「荒野の七人」で砂埃がヒューヒュー舞う中、ガンを構えるシーンが浮かんでくるような。
ただ外を眺めるだけのつもりだったのだが、私はいつの間にか歩き出していた・・・。
フラフラ足の向くまま歩いていたら、ローマの‘真実の口’に似たような顔が路地の突き当たりに見えた。
「なんだ・・・?」
吸い込まれるように無防備にも近寄っ行ったら、気がついた時には男共に囲まれていた。
「(ヤバイ!)」だけど、ここで動揺してはいけない。
「(何事もないように引き返すんだ)」とそのまま方向転換した。
人の輪がせまくなかったからセーフだったが、ほんとに冷や汗ものだった。
だけど・・・気のせいだったかもしれないのだ。
彼らはいつものように、ただたむろしていただけなのかもしれない。
でも、用心に越したことはない。ここは外国で、メキシコの路地なのだから。
それにしても、あれは‘真実の口’に見えたのだけど・・・確認できずじまいだった。
メキシコに行って帰ってくるまで私はずっとバックをたすきがけにしていました。
アメリカに再入国してホッとした表情の1枚の写真があります。
バックをたすきがけにして放心状態のtuziの写真です。
黒江と福島は脅しすぎなのよ・・・意味もなく怖がらせて、錯覚を起こさせる。
人間の心理などそんなものではありませんか?
怖い思いをしながらでも、この当時の私だから思い出が出来たのですし、この時にしか持てない感覚で旅をする。
二度とこの時代の私には戻れませんし、悲しいかな時間は進むしかないのです。
だからこそ、自分が‘どう思ったのか’‘あの時こう思った’ということが私にとっての、
財産になっていくのだと考えています。
だって、この感情だって私にとっては‘この時限り’の心境で、私たちは前に進むしかないのですから・・・。
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