National Archaeological museum
in Athens

アテネ国立考古学博物館全景


「Marble statuette of a harpist」 「Statuette of a flutist」
BC.2400-2200
      

先史時代(BC2500〜2200頃)の小さな像。高さ10cm〜15cm位です。
左はハープ、右はフルートを奏でています。
古代から音楽は人を癒す力を持っていたのでしょう。これがギリシャ彫刻の始まりです。
竪琴を弾く人物像フルートを吹く人物像、などこれら音楽家像は棺の中に収められたと考えれているようです。
人物といっても宇宙人のような抽象的な像です。
もともとギリシャ彫刻はこのように小さいものだったのですが、エジプトやメソポタミアの影響を
受けて一気に巨大化し、等身大に近い物となったのです。
また、同時期に神殿の建築が盛んになったことを受けて、神々が題材となってアルカイック期クラシック期を経て、
ミロのヴィーナスや現在バチカンにあるラオコーン像に見られるヘレニズム期へと発展していきます。


「Mycenaean gold mask」
BC.1580-1550
   

ガラスケースに黄金のマスクがずらーり・・・。
「これじゃ小さすぎて顔からはみでちゃうやんか」と思いながら。
他に黄金の杯(マグカップみたいの)、指輪、青銅の剣など・・・。
薄い造りからして高度な技術が必要だし、黄金の豊富さからしても繁栄はいかばかりか。
これを見てミケーネ文明が黄金文明だったことを痛感した。
ミケーネの発掘にあたったシュリーマン(ドイツ人考古学者)が黄金マスクの一枚を、
アガメムノンであると主張したことは有名な話であるが、私の目にはどれも同じに見えた。
「本物はどれだ?」

      

ミケナイ文明の品々は全て黄金である。
マスクは10数点、カップ(下左)も形もさまざまに20数点を超える展示がある。
他に黄金の冠(下右)、アクセサリーなど。どれも純金です。


「Statue of Kouros from Volomandra」
BC.550


クーロスはどれも正面向きで、直立した姿勢で表されている。
また、両腕をしっかり胴体につけ、かならず左足を一歩前へ踏み出している。
が、重心は真ん中。ここにはエジプト彫刻の影響が強く感じられるが、
両足に均等に体重をかけているのと、裸体である点で異なる。
(エジプトは両足を揃えているし、裸体ではない)
どれも細身ですんなりしていて、優美である。
ギリシャ美術で裸体の持つ意味は、この頃まだ人間と神の区別がつかずなのかつけずか
同一視していた名残と考えられている。神話が日常の身近に存在していたことがよくわかる。
後期にはいると人間の自然な体形、例えば筋肉を際立たせて強調するようになる、
などが見られる。
ここでは極めて美しいスッとした、それでいて肩幅の広さから男性とわかる繊細な彫刻でした。
クーロスもコレーも、ギリシャ産の大理石製である。
アンフォラとクーロスは墓碑(埋葬用)として作成されたらしい。
というのも出土先が墓地だからなのです。


「Thera. The fresco of the Young Boxers」
BC.1550-1500


博物館の2階は壁画と壺がほとんどだった。
壁画は、サントリーニ島で発掘されたアクロティリ遺跡の壁画が展示されている。
とても3000年も前に描かれたものとは思えないほど色鮮やかで美しい。
BC1500年頃噴火と地震によって火山灰に埋もれたため色の保存状態がいい。
私が、その色彩に目をとめたのがボクシングをする少年たちと題されている壁画だった。
女の子のように髪を腰近くまでたらした少年ふたりが右パンチをお互いに出し合っている。
赤い体に水色の腰紐とグローブ。
顔はエジプトのファラオを思わせる黒で縁取られた大きな目。
襖2枚分くらいで、見ごたえのある大きさ。
数ある壁画の中でも色彩が鮮やかだったように記憶していますし、
変に小さくまとまらずに自由で大胆に描かれているのが印象的でした。








tuzi のひとくちメモ 「ギリシャ美術用語」
コントラポスト
  重心のかかった立脚と、力を抜いた遊脚を区別することにより、像全体がS字を描き、動きが生じた対比の表現。
カノン
  人体を解剖学的に正確に測り、一定の比率と寸法によって形作ること。


「Poseidon of Artemision」
BC.460

(部分)


(部分)

ポセイドン像
ブロンズ像、高さ209cm、作成時期BC460〜BC450、
エウボイア島アルテミシオン岬沖出土。
従来は矛をもったポセイドン像とされていましたが、最近では雷(いかずち)を投げるゼウス像、という見方が有力。
左手を前に肩の高さで狙いを定めて、右手を後ろに槍を持っているかのように構えて
左足が一歩前で重心もやや前で、後ろの右足のかかとがやや浮いている。
体は横を向いて開いており、顔は前方左手を見ている。うっとりしてしまう美しさ。
手の指と、足の指の美しいこと。左指の伸び具合、右足のかかとから下の着地具合。
完璧な美しさ・・・。
強さを発揮するのに必要な脱力。脱力にして最強・・・。


「The youth of Anticythera」
BC.340

(全体像)

アンディキディラの青年像
ポセイドン像と展示室は離れていますが、見事にクラシック期の特徴を備えています。
左足にほとんどの重心をかけ、右足虚歩(太極拳用語で、ほとんど体重がかかっていない足の事)
かかとは高く浮いています。いわゆる丁歩(太極拳用語で添えているだけの足の事)です。
右手を斜め前方に目の高さで伸ばし、沈肩墜肘(太極拳用語で肩より肘が下がってリラックス
している様子)手にはりんごを持っていたと言われています。
左手はわずか後方に自然に下げられている。顔と視線はりんごを斜に見ている感じ。
逆三角形の逞しい体と、無表情ではあるが理想的な美形。
りんごは失われていますが目は入っていました。美しい。
ギリシャ美術の傑作といってもいいのではないでしょうか。


(部分)

この青年が海中に沈んでいたのが発見されたのは1990年のことでした。
アンディキディラ島の沖合に沈んでいた難破船から発見されたのです。
ポセイドン像同様、完璧な肉体。
アルカイック期以降、人間の肉体は、より人間に近づき(神話から科学へ)肩幅も胸板も厚い。
題材は神話でも、表現は神ではなく人間で表現している。



tuzi のひとくちメモ 「ギリシャ美術用語」
黒像式(BC700〜500)
  赤い生地に黒い像で神話の神々を描く。
赤像式(BC550〜400)
  像を赤い生地のまま残して、まわりを黒く塗りつぶす。
白地式(BC470〜)
  容器の画面となる部分を白地にして、黒ないし茶の輪郭線と色絵の具で像を描く。死者供養の陶器画。

「壺」
BC.500


BC.300


2階展示室のほとんどがほとんどが壺であり、ひとつひとつがかなり大きい。
酒、水、油、穀物の保存用に使われたもの。
絵柄は戦いの様子や、商業の取引の様子やら生活の様子を描いたものが多く、当時の情報が見て取れる。


「Athena of Varvakeion」
BC.438


「(こんな目立たない奥地にあるの?)」「(物置のようなこんなすみっこに?)」
アテネの守護神がこのように、ひっそりと人知れず置かれているなんて・・・
台座は高いが、像そのものは1mもないくらいでした。パルテノン神殿に設置されていた実物ではないかもしれませんが、
私が以前本でみたアテナ神像そのものでした。
思いがけず逢えたアテナの守護神。
アテナ女神はアテネの守護神の座をかけて戦い、力ずくで勝ち取った強いお方です。
その像はしっかり武装して、盾と剣を持った勇ましい姿をしています。








vol.32