雨
太極拳を習うのが目的なのだから、師父がいないことには始まらない。
5月の末に行きたいと考えている、ということを伝えて確認を取ってから旅行の予約を入れたので、
前回のように「(会えないのでは・・・)」という不安はない。
師父は5月始めに短い旅行に出かけるがその後はずっと香港にいるということだった。
毎朝元気に太極拳をしているということで、元気そうなので私も安心した。
77歳の時、現役を引退して、仕事をしていないはずだったが、奥さんが10時までに職場に
行かなければならないと書いてある。
師父は愛妻家なので、一緒に毎朝朝食をとってそのあと奥さんを仕事に送り出すのだろう。
返事の手紙から私はそう勝手に思い込んでいた・・・。
早朝6時半ホテルを出る。今日は観光があるので習えないが、挨拶だけでもと思って出かけた。
どしゃ降りの雨だった。気温も30℃を超えている。湿度100%じゃないだろうか・・・?
蒸し暑いを通り越してサウナ状態、衣服にペトッと湿気でくっついたヤナ感じ。
でも、暑いのが大好きな私は、このベットリ感にも慣れて、いそいそと懐かしの‘九龍公園’に向かったのでした。
雨が降っている上に朝の靄で空気が白くけむっていた・・・
師父の運動場は回廊である。
うねうねと曲がりくねった屋根つき廊下なので、雨でも日照りでも天気の影響を受けずに運動が出来る。
「もうすぐ会えるんだ」と向かったはいいが、いつもの場所に師父の姿がない!
「えっ?」
集団のエアロビダンスの方々が号令と音楽にあわせて運動しているではないか。
「えっ? 確かにここだったはず・・・」
どこに行っちゃったものやら・・・廊下をもう少し先に行ってみた。
雨のせいでいつもは外で運動している人たちが避難してきている。廊下は満員御礼状態だった。
「いたー!」
やっと見つけた。挨拶もそこそこに、いきなり「場所変えたんですか?」と聞く私に、
「今日は雨だから、別の人たちに場所を譲ったのだ」ということだった。
「明日からは、いつのも場所にいるよ」と。
「そうでしたか、びっくりしました。私は6月3日まで滞在します。どうかよろしくお願いします」と
それだけ伝えてホテルに戻った。明日からが本番だ。
お土産
前回(1998年香港参照)お土産で散々苦労したが、今回はすんなり受け取ってくれた。
「おかしい!何か企んでいるのでは・・・?」と、一抹の不安を感じながらも、
「受け取ってもらえないよりは、いいっか・・・」と余計なことは考えないことに。
今回のお土産もたいしたものではない。地元の日本酒と、三色最中、それと愛妻家の師父に
ちなんで夫婦茶碗(蓋付湯呑)を持ってきた。
後日真相が発覚するまで、この中に間違いがあったとはこの時知る由もない私だった・・・
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