太極拳in香港(4)

2000年6月1日

病院
練習に行くと真っ先に、咳は大丈夫なのか?と聞かれた。
「昨晩はひどくて、眠れませんでした」と答えると、「それは病院に行ったほうがいい」と言う。
「うーん、そうかなあ・・・」と私も本気で悩んでしまった。
そういえば以前、香港には保険がないというのを聞いたことがある。
国の健康保険とかじゃなくて、私設の生命保険のことを指しているのだと思う。
だから、病気して働けなくなったり、事故を起こすと大変なんだと・・・。
ちなみに、私は香港の病院には結局行きませんでした。

ついに・・・
練習を始めて3日目。師父の指導は第3段階に入ったようだ。
毎回2回套路を通して、そのあと細かいところを直しながら進めてもらっていたのだが、
ついに「ひとりで・・・」と言われたのだ。
「(ついにきたか・・・まだ早いと思うんだけどなあ・・・)」と泣き言を言ってる場合ではない。
懸命にがんばった。ところどころ伴走してくれて助けてもらいながら・・・。
やはり、ひとりになると‘まだまだだ’と実感させられる。
ついていってる時は‘なかなか’と自惚れてしまうが、ひとりになったとたん、
ウニャウニャ、グズグズになってしまって・・・、自分の甘さを思い知らされてしまう。
いつもの師父なら穏やかに微笑んで見守っているのだが、今日は目が違っている。
気を引き締める私だった。いつまでも、頼っていてはイカンのだ。
また習いに来ればいいさ、という甘い気持ちは捨てなければ!
師父はいつまでも私を待っててはくれないのだ・・・。

師父の友人
私たちが運動しているすぐ近くで、見たことが運動をしている上半身裸のおじさんがいる。
上着を着ていればそれなりの地位にあるだろうと思われる、理知的な顔立ちのおじさん・・・。
でも、毎朝上半身裸で腰に手ぬぐいをぶら下げているので、ただの運動好きのおじさんにしか見えない・・・。
この‘裸のおじさん’に「熱心だね」と声をかけられる。
いつもヘラヘラしながら師父についていくだけの私は恐縮してしまって「とんでもないッス」と
大きく手を横に振ってみせる。
その傍らで、師父が穏やかに微笑む・・・こんな光景がなぜか忘れられないのです。
師父の太極拳の動き、周りの風景、とりまく人々・・・
穏やかに微笑む師父の表情が焼きついている。

 「撮らんでくれ〜」いつかまた会いましょう!


 別の場所で‘金鶏独立’する師父の友人


不思議なものです、ついていくのに必死でまったく余裕なんかないはずなのに、
私の記憶には、フッと力が抜けて緊張が解けた瞬間の風景や人々の表情がありありと残っている。
太極拳でよくでてくる言葉に‘放松’(ファンソン)というのがあります。
‘放松’が重要なんだと・・・この解釈は様々ですが、私は一言で言うなら‘リラックス’だと思っています。
脱力にして初めて最大の力が発揮できる。
例えば、野球のイチロー選手のバッターボックスでの構えなどは‘放松’なのではないかと思うのですよ。
力んで構えていたら最大の力は発揮できないでしょ?
力んで身構えていたら呼吸は止まっているはずでしょ?
呼吸が止まっていては思考回路も、身体能力も最大限発揮できないはず・・・。
だから、私のように必死こいてるうちは、決して太極拳の動きは身に付かない。
香港に習いに行っても記憶にあるのは、リラックスした時に見えた周りの風景や、
人々の表情だけだったりなのです・・・。

横のレストラン〜多来試
今日は目先を変えて、ホテルの横にあるレストランに行こうと思う。
すぐ隣なのに「灯台下暗し」で私も昨日まで気がつかなかったほど。
私は昨日の夕飯をここで食べた。その時、日本人のご夫婦に話しかけられた・・・というか、
お店の人に「日本人が来たから」とわざわざ合席させられたのだ。
ご夫婦はこのレストランにわざわざタクシーでやってきたという。
「どうしてですか?」と聞いた私に「ガイドブックに載っていたから」というではないか!
「知らなかった・・・道理で美味しいと思ったはずだ」
私が食べたのはお粥と、レタスのオイスターソースがけの2品だったが、どちらも味が抜群によかった。
それで、明日は師父夫妻と来ようと思ったのだった。
向かいのレストランには悪いんですが、隣りのお店の方が美味しいです。

 ‘多来試’の店先


香港のガンドンホテル隣、‘多来試’(トーライシー)は私お薦めの食堂です!
本格豪華料理というなら、漢口道‘竹園海鮮飯店’がお薦めです!
お昼の飲茶では、ここの‘腸粉’と‘マンゴープリン’は絶品です。(1998年香港でも紹介しています。)



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